日本一の山に、いつか登ってみたい。
そういった漠然とした憧れはあったものの、自分から動きださなければ「いつか」はやってきません。
そこで、元号の変更をきっかけに令和元年という記念の年に、富士登山に初挑戦してきました!
今回は、登山未経験の初心者が富士山に登ってきた模様をお届けします。
富士登山のルートや開通期間の情報もまとめていますので、富士登山に興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
もくじ
それぞれに特徴の異なる5つの富士登山ルート
富士山の山頂へと続く登山道は、一般的には吉田・須走・御殿場・富士宮の4つがありますが、実は知られざる5つ目のルートとして「プリンスルート」が存在します。
- 吉田ルート
- 須走ルート
- 御殿場ルート
- 富士宮ルート
- プリンスルート
初心者でも登りやすく人気ナンバーワン、そのため混雑することでも有名な吉田ルート。
標高差が小さいものの、序盤から険しい道が続く富士宮ルートなどなど、ルートごとに特徴が異なります。
そして、第5のルートとして密かに人気を集めているプリンスルートとは、富士宮ルートから出発して、途中からは御殿場ルートを進むという、2つを繋いだ新たなルートです。
富士宮ルートの特徴である「高い標高からのスタート」と、御殿場ルートの特徴である「混雑せずに歩きやすい」という2つのルートのメリットを併せ持った、まさに良いとこ取りなコースとなります。
ちなみにプリンスルートという名前は、2008年の8月に皇太子殿下が富士登山をされた際に歩かれたことが由来となっています。
私たちは今回、このプリンスルートを通って富士山を登る計画を立てていました。
富士登山ルート開通期間
富士山の登山道は例年7月上旬から9月上旬まで開通します。
ルートによって開通期間が若干異なるため、必ずチェックしておきましょう。
2019年の開通期間は以下の通りでした。
ルート | 開通期間 |
---|---|
吉田ルート | 7月1日(月)~9月10日(火) |
須走ルート | 7月10日(水)~9月10日(火) |
御殿場ルート | 7月10日(水)~9月10日(火) |
富士宮ルート | 7月10日(水)~9月10日(火) |
山頂(お鉢巡り歩道) | 7月10日(水)~9月10日(火) |
吉田ルートだけ一足早く開通しますが、山頂のお鉢巡り歩道は他のルートが開通する日までは通れません。
登山初心者が富士登山に挑戦するために必要な準備
「富士山を登りに行こう!」と、けんいち(@innovarth_1)さんに誘われたのは8月12日のことでした。
もともと登山自体に興味があったことや、静岡県民としては目の前にある富士山をいつか自分の脚で登ってみたいと考えていたこともあって快諾。
なんと、まさかの誘いから4日後に登るというハードスケジュールでした。鬼かな?
富士山は「日本一、初心者が多く登る山」といえど、不十分な準備で臨めるほど甘くもありません。
そんなわけで、富士登山に必要な装備や服装を慌てて準備することに。
餅は餅屋というわけで、スポーツ用品店で担当の方に相談をしつつ、初心者の富士登山に必要な物をひと通り揃えました。
詳しくは、こちらの記事にまとめてあります。
初心者の富士登山に必要な持ち物とおすすめの装備をまとめて紹介装備はなんとか揃えられたものの、心配なのは体力です。
筋トレはしているものの、長時間の有酸素運動などはここ数年さっぱりでしたので、果たしてどうなることやら…
ちなみに、けんいちさんも私も登山は今回が初ですが、富士登山を4回も経験されているやまと(@ymsssssn)さんも一緒に登るので心強いです!
登山道の開通期間はマイカー規制に注意
富士山は登山道の開通時期と時をほぼ同じくしてマイカー規制が実施され、自分の車で登山口まで行くことが出来なくなります。
2019年のマイカー規制期間は以下の通り。
ルート | マイカー規制実施期間 | 乗換駐車場 |
---|---|---|
吉田ルート 富士スバルライン |
7月10日(水)17時~9月10日(火)17時 | 富士山パーキング |
須走ルート ふじあざみライン |
7月10日(水)正午~9月10日(火)正午 | 須走多目的広場 |
御殿場ルート | 実施なし | |
富士宮ルート 富士山スカイライン |
7月10日(水)9時~9月10日(火)18時 | 水ヶ塚駐車場 |
車で行く場合、それぞれの乗換駐車場に車を停めて、シャトルバスに乗り換えて五合目の登山口へと向かいます。
なお、御殿場ルートではマイカー規制が実施されないため、登山口まで自分の車で行くことが可能です。
私達が登る予定のプリンスルートは富士宮ルートから登り始めるので、水ヶ塚駐車場に車を停めて、シャトルバスで富士宮口五合目を目指しました。
人生初の富士登山は富士宮ルートで挑戦!
シャトルバスで富士宮口五合目に到着した私達。
しかし、この日は台風が数日前に来たばかりだったのも影響してか、一合目の水ヶ塚駐車場時点では数メートル先が見えないほどの濃霧という天候でした。
五合目まで来てみると霧はだいぶ晴れたものの、初心者が2人いる状態での夜間登山では少しでも安全なルートを選びたいところです。
そこで予定を急遽変更し、プリンスルートでなく富士宮ルートをそのまま登ることに。
道の険しさといった難易度としてはプリンスルートよりも富士宮ルートの方が厳しいようですが、特殊な登り方をするプリンスルートよりも富士宮ルートをそのまま登った方が、視界が悪くても登りやすいだろうという理由です。
また、プリンスルートよりも富士宮ルートの方が人が多く、いざという時にも何かと安心できますからね。
嵐のような悪天候!?
ストレッチも済ませ、いざ出発!…というタイミングで、登山道手前にある富士山総合指導センターの方に呼び止められました。
なんでも台風の影響か、八合目より上は嵐のようになっていて、山頂までは行くのは厳しいのだとか。
五合目の売店は食堂や宿泊施設がセットになったレストハウスですので、そうしたアドバイスを受けて、予定を変更して五合目で仮眠を取られている方も多く見かけました。
私達はというと「行けるところまで行ってみて、厳しければ引き返してこよう」という結論に。
幸い五合目の時点では雨も降っておらず、歩きやすそうなコンディションでしたので、無理せず行ける場所まで登ってみることにしました。
30分もかからずに六合目へ到着
いざ登り始めてみると、既に酸素が薄いのか、単純に体力不足なのかはわかりませんが、早くも息が上がってしまいます。
こちらは昼間の下山時に撮影した写真ですので、だいぶ先の方まで見渡せますが、私達が登ったのは21時過ぎで街灯なども存在しないため、ヘッドライトで照らした足元以外は何も見えないような状態でした。
そういえば、同じシャトルバスの乗客や、売店でギュウギュウ詰めになるくらいにいた人達の数に対して、登山をしている人の数が妙に少ないように感じました。
富士山総合指導センターの方は登山客全員1人1人に声をかけていたため、夜に登るのを断念した方も多いのでしょう。
漫画やアニメの受け売りですが、登山では無理をしないことが重要ですからね。
限界を迎える前に早め早めの休憩を…と意識していましたが、1回の休憩も含め、わずか30分ほど歩いたら六合目に到着です。
慎重すぎるくらいのゆったりペースでも30分で五合目から六合目まで登れたのもあって、「このペースならば山頂に着くのはご来光よりも早すぎるくらいかな」なんて思っていた時期が、私にもありました。
この時は知らなかったのです。六合目と七合目の間があんなにも長いなんてことを…
七合目が遠すぎる
六合目を越えたあたりから道が急に険しくなってきます。
岩場も多く、場所によっては地面に手を着いて、岩を掴みながらよじ登っていくようにして少しずつ進んでいきました。
そして、六合目を出てから、どれだけ歩いたでしょうか。
歩けども歩けども七合目に着きません。
それもそのはず、目安の時間が五合目~六合目間は20分なのに対し、六合目~新七合目間は3倍の60分と想定されています。
この事実を知ったのは帰り道のことでしたので、必死に登っていた時の私達は「なんで七合目はこんなに遠いの…?」と頭にクエスチョンマークを浮かべつつ、六合目に着いた時に抱いていた甘い考えが少しずつ崩れていくのを感じていました。
1時間半ほどかけたでしょうか、やっとの思いで七合目に到着しましたが、ここから難易度が更にアップします。
七合目の休憩所を一歩出ると、飛ばされてしまいそうなほどの猛烈な風が吹きすさんでいました。
半袖ハーフパンツのような軽装の外国人登山客もたくさんいたのですが、七合目から先のあまりの爆風に、断念して引き返してくる方もいたほどです。
私もここでウインドブレーカー代わりにレインウェアを重ね着してフル装備になり、「八合目を目指して頑張るぞ!」と意気込んだ矢先に、まさかの文字が目に飛び込んできました。
六合目から、やっとの思いでたどり着いた場所は新七合目であり、この先にまだ元祖七合目があるのだそうです。
ちなみに先ほど到着した新七合目は御来光山荘(ごらいこうさんそう)という名称で、新七合目よりも上ならばご来光は拝めます。
ご来光目的での登山をする方は多いですが、無理して山頂を目指さずとも見ることは出来るため、その時のコンディションと相談しながら、安全に楽しみましょう。
さて、相変わらずのハードな登山道に加えて、油断をすると飛ばされてしまいそうな風が、体力を容赦なく奪いにきます。
険しい山道は相変わらず険しいままで、一向に優しくなる気配がありません。
道というより岩場を登っていくため、一歩一歩が大きくなりがちで、その影響か左の股関節がズキズキと痛み始めていました。
元祖七合目に到達した頃には、口を開く元気も無いほどに消耗しており、今こうして振り返ってみても、何を話していたかほとんど記憶に無いほどです^^;
八合目池田館で休憩
八合目の手前には一段一段がとても大きな階段があり、最後の力を振り絞って登り切りました。
最後の力…そう、つまり私はこの八合目でリタイアです。
股関節の痛みと、それを庇って歩いていたところ、脚の筋肉も攣り始めてきていたので、残念ながらここで脱落することに。
「山で大事なのは諦める勇気だ」と某アニメで聞いた言葉を自分に言い聞かせ、やまとさんに動画撮影用カメラのOsmo Actionを託し、けんいちさん・やまとさんの2人を見送りました。
八合目でリタイアと言っても、タクシーやバスが出ているわけではありませんので、自分の足で歩いて下山する必要があります。
そのため、限界まで追い込んでしまうと帰れなくなりますので、くれぐれも早め早めの判断を心がけましょう。
私は朝まで山小屋で仮眠をとって、この八合目でご来光を見た後に下山し、富士宮口五合目で2人と合流することにしました。
驚いたことに、富士登山道では携帯電話の電波が繋がっているため、連絡に困らない点もリタイアを決断する後押しとなりました。
せっかくですので、私が泊まることになった八合目の山小屋「池田館」を詳しく見ていきましょう。
宿泊料金は以下の表の通りで、土曜日はそれぞれプラス1,000円となります。
宿泊料金 | |
---|---|
1泊2食付 | 8,000円 |
1泊1食付 | 7,000円 |
素泊まり | 6,000円 |
私の場合は深夜1時頃からの素泊まりで6,000円でしたが、何かあった時のことを考えて、多めにお金を持っておいて正解でした。
小銭しか持っていなかったら…と考えると、ヒヤッとしますね。
受付には売店もあり、へとへとになった状態で買って食べたクリームパン(300円)の味は一生忘れないでしょう。
また、私の場合は突然の当日利用でしたが、混雑時には山小屋がいっぱいになっている可能性もありますので、最初から山小屋での仮眠を予定に組み込んでいる場合は、あらかじめ予約しておくことをおすすめします。
トイレは200円ですが、宿泊客は無料で何度でも使える点も、ちょっと得した気分ですね。
池田館に限らず登山道には水道が無いため、ウエットティッシュを持ち歩いておくと、汚れた手を拭いたり何かと役立つ場面は多いです。
宿泊場所は3人ほどが泊まれる相部屋となっており、寝袋を使わせてもらえます。
布団も何も無しでそのまま床に寝るのを覚悟していたため、まさかの寝袋の登場はありがたかったですね。
昼間に八合目や九合目まで登っておいて、ご来光の時間に合わせて山小屋で仮眠をとる登山客も少なくありません。
ご来光の時間から逆算してちょうどいい時間に登れるように、八合目の池田館では深夜1時過ぎに「ご来光目的の方はそろそろお時間です」と声をかけてくれるサービスがありました。
これならば、うっかり寝過ごしてしまうことも無さそうですね。
私と相部屋だった登山客の方もご来光目的の仮眠だったらしく、おかげで私は朝まで1人、貸し切り状態の部屋でぐっすりと眠ることが出来ました。
早朝4時半頃に目を覚まし、山小屋の外に出てみると、目の前いっぱいに雲海が広がっていました。
八合目の標高は3,250m、日本で2番目に高い山の北岳(きただけ)の標高が3,193mですので、この時点で既に富士山でしか体験できない高さまで来ているわけです。
山頂まで行けなかったことはもちろん残念ですが、それでもこの絶景を味わえるのですから、やはり日本一の山は凄いですね。
5時を少し過ぎた頃に、雲海から朝日が昇ってきました。
神々しさすら感じるその眺めは、疲れも痛みも全て洗い流してくれるようです。
いつか、ここよりも更に高い場所で…と富士登山再挑戦への想いを胸に、その後は山小屋のチェックアウト時刻である7時ギリギリまで二度寝と休憩をがっつり済ませ、登ってきた富士宮ルートをそのまま下山しました。
ちなみに、富士宮ルートは登りと下りで同じ道を通るためにすれ違いが多く発生しますが、登りと下りで道を分けているポイントも存在するため、標識に従って進んでいきましょう。
富士山頂のご来光を撮影した様子は動画でも公開!
私と別れ、先へと進むけんいちさんとやまとさんの2人。
九合目からは、けんいちさんも相当キツかったとのことで、口数がどんどんと減っていきます。
体力よりもとにかく呼吸が苦しかったと、九合目で購入した携帯酸素を片手に最後のひと踏ん張りです。
標高3,400mでも山小屋があって物が売られているなんて驚きですよね。
そして物価も標高とともに上がるため、下界では数百円で買える携帯酸素が、九合目では2,000円となります。
ただの缶コーヒーも、九合目の自動販売機では400円です。
お値段にも驚きますが、それ以上に標高3,400mまで補充に来ている人がいることに何より驚愕させられます。
少しずつ、遠くの空が白んでくるなか、とうとう富士山頂までやって来ました。
富士山頂から見るご来光や雲海といった美しい景色をはじめとした、この富士登山の模様はぜひ動画を見てみてください!
5つ目の登山道プリンスルートを通って下山
山頂でご来光を拝んだ2人は、登ってきた富士宮ルートでなく、当初の予定だったプリンスルートで下山をすることに。
宝永山の山頂からは、富士山を横切るようにして宝永山遊歩道を通って富士宮ルートへと移動していきます。
その際に宝永山の火口内を登下山するため、帰りの下山中にもかかわらず登らなくてはならないと、最後まで厳しい闘いは続きます。
2人が下山(登山)をして五合目に戻ってきたのは午前10時半過ぎ、五合目を出たのが前日の21時台でしたので、半日以上もかけた長い登山となったわけですね。本当にお疲れさまでした!
何度でも登りたくなる魅力的な富士山
残念ながら山頂でのご来光を拝めなかった私ですが、今回の富士登山は最高の体験でした!
痛みや疲れもあったものの、それ以上に「登りに行って良かった」という満足の方が遥かに大きいですね。
静岡県の富士市や富士宮市では夜になると、富士山の山小屋付近の明かりが、町からでも光って見えます。
それを見るたびに「あそこまで登ったんだなぁ」と思いをはせ、ほんの数日前に登ったはずなのに、早くもまた登りに行きたい気持ちが高まってきます。
2019年の富士登山シーズンは終了しましたので、リベンジも兼ねて来年また挑戦したいです!
皆さんも準備を整えて、2020年に富士山を登ってみませんか?